2017.08.26 [重要:予告] カスタムビルド配布終了のお知らせ

既にTwitterの方で何度か触れていますが、本カスタムビルドは現在リリース準備中のR60を最後に配布を終了します。

配布終了にいたる経緯

本カスタムビルドではPentium M/Celeron MなどのCPUを搭載した古いPCも動作対象とするために32Bit版のChromium OSを配布していますが、Googleを中心としたChromium OS開発チームは、この32Bit版の開発・保守を終了してしまいました。

参考: https://bugs.chromium.org/p/chromium/issues/detail?id=735278

上記サイトの”x86-generic”は一般PC向けの32Bit版Chromium OSのことを指しますが、”We are turning down x86 support”とサポートをやめたことが明記されています。

Note

このページには、サポートしなくなったx86-genericに関する設定を、Chromium関連プロジェクトのビルドシステム(いわゆるCI:continuous integrationのための環境であるBuildBot Waterfall)から消す作業の履歴が記録されています。

その結果、32Bit版Chromium OSは開発チームによってビルドの可否すら検証されなくなりました。実際、現在Beta Channelとしてリリースされている次期バージョンR61のソースコードは既に32Bit版を正しくビルドできなくなっています。個人のChromium OSビルダーとして有名なArnoldTheBat氏も7/31日付けで32Bit版のNightly Buildを終了しています。

参考:https://arnoldthebat.co.uk/wordpress/2017/07/31/x86-nightly-builds/

今の時点ではまだ私がこのエラーを修正してビルドすること自体は決して不可能ではありませんが、開発チームがメンテをしなくなった状態にあるため、品質、安全性は全く検証されていません。単なる一個人である私が開発チームの代わりに従来と同等の動作検証を行うことは不可能です。 しかも、64Bit版Chromium OSの開発は継続しているためソースコードには今後もどんどん手が加えられていきます。これらの修正はすべて32Bit版に対する考慮無しで行われ、32Bit版で動くかどうかの検証が一切行われません。

つまり、普通はバグ修正を行い品質を向上させるためにOSのアップデートが行われるのですが、32Bit版Chromium OSに関しては今後バージョンアップするたびにどんどん品質が悪くなっていくという未来が待っているということになります。

Windows XPやVistaのサポート終了に伴う代替OSの候補としてChromium OSに興味を持った方が多いと思います。また、GoogleやChromebookが持つブランドイメージなどから、Chromium OSに対しても安全性が高い、という印象をお持ちの方が多いと思います。しかし、上に述べたように、今の32Bit版Chromium OSはXPやVistaと同様にサポート終了の状態であり、しかもビルドがエラーで失敗する状態のまま放置されているような有り様なので、XPやVistaの代替として利用できるだけの品質を保っているとは到底言えない状態にあります。

Attention

あくまでも32Bit版の話です。64Bit版はChromebookと同等とは言えませんがこのようなひどい状態ではありません。

このような状況をふまえ、世間一般が”Chromium OS”という名前に対して抱いている、「Googleが作っている安全なOS」というイメージと大きく実態が乖離している32Bit版Chromium OSを、このような実情を知らない不特定多数のユーザに対して広く配布する行為はとても無責任なものであり、これ以上は配布を継続するべきではないという結論に達しました。 いままでカスタムビルドをお使いいただいた方には大変申し訳ありませんが、このような事情ですので配布終了についてご理解いただきますようお願いいたします。

今後の予定

現在リリース準備中であるR60_9592.82、および、既に本家でリリースされているR60_9592.85についてはリリースを行います。そのあともR60でアップデートがリリースされた場合はそのリリースを行います。本家のStable ChannelがR61になった時点で本カスタムビルドの配布活動を終了します。問い合わせ対応や動作報告の受付などもこの配布終了と同時に終了します。

本サイトは当面の間跡地という形で残すと思います。 アップデートサーバーは本年いっぱい程度で予告なく停止します。

なお、64Bit版Chromium OSについては、私の方ではビルドして配布することは今のところ考えていません。以下でも触れますが、64Bit版にはCloudReadyという完成度の高いビルドが既に存在するため私があえて別のビルドをリリースする必要性は薄いと考えています。また、今までのカスタムビルドが対象としてきたPCのうちかなりのものについては動作対象外となるため、既存ユーザの救済という観点からはほとんど意味がないこともその理由です。

今後もChromium OSを利用し続けたい場合

今後もChromium OSを利用したいという方は、アメリカのNeverware社がリリースしている CloudReady の利用を検討することをお勧めいたします。とくに64Bit OSの動作が可能なPCをご利用の場合はCloudReadyでニーズを満たせると思います。CloudReadyの配布サイトは英語ですが、日本語でインストール手順を説明しているサイトも検索すれば多数見つかります。 ただし、本カスタムビルドからCloudReadyへのアップデートはできません。再インストールが必要になります。

32Bit版についてはNeverware社が今後どのようにしていくのかわかりませんが、カスタムビルドより本家ChromeOSへの追従が遅いため、しばらくは32Bit版のリリースが続くかもしれません。また、こちらと違い企業がやっているビルドであるため、自力で32Bit版Chromium OSのメンテナンスを続けていくかもしれません。 ただし、Pentium M/Celeron M、およびSSE3対応していないPentium4 CPUを搭載したマシンでは32Bit版CloudReadyが動作しないはずですので、これらの機種をお使いの方はChromium OS以外の選択肢を検討していただく以外に方法がなくなります。

このような結果となってしまい大変残念ですが、今までご利用いただいた方々には感謝いたします。ありがとうございました。